第13回全国高等学校版画選手権大会

個人部門入賞作品 2013年

新潟日報社賞

静岡県立伊東高等学校城ヶ崎分校
2年 堀江 志 さん

【審査員評】

この作品の良いところは、自分が体験している大好きな世界を若い感覚で表現していることです。水の中の色や状景がのびやかに描かれており、首を出しているあたりの水のしぶきの表現が秀逸で印象的です。おそらく、下図はガッシュ水彩で描かれたものかと思いますが、それを原画として版を沢山作って刷り重ねているうちに、描画よりも曖昧さや緻密さが集積されていって、より動きのある表現になったのではないかと思います。

版画には、大胆さと同時に緻密さも必要だと言う事を体験したのではないでしょうか。

NHK新潟放送局賞

高知学芸高等学校
2年 橋田 佳奈 さん

【審査員評】

モノクロの小品ですが、状景がよく整理されて描けています。

この作品の中で特に目を惹かれる右上の小さな舟溜りが、前景の大半を占める大きな水の流れを引き締めており、陽射しと影の大きな明暗が、山村のゆったりした空間を広々と感じさせています。風景画は、見えるものを全てそのままに描くのではなく、自分が何を見ているかを表現するために構図をよく考えて始めると、良い作品になります。そしてモノクロ作品は、黒と白の量のバランスによって美しくも退屈にもなりますし、1版刷りの作品は、黒をパーフェクトに刷らなければ美しい作品になりません。もう少ししっかりした刷りができるように学んでください。

BSN新潟放送賞

新潟県立豊栄高等学校
1年 佐久間 将寿 さん

【審査員評】

抽象的な構成のエッチング作品で単色刷りですが、中心の、瞳のようなつぼみの表現に心がこもっていて、そこにだけ力強さがあり、それが画面全体を魅力的にしています。

星屑の多い宇宙空間のなかに浮かぶシンボルのように描かれていますが、空間の構成は、まだどうにでも変わるような不確かさです。もう少しいろいろ描いてみると良いでしょう。

全体が透明感と緊張感のある確かな空間になると、もっと良い作品になります。

NST賞

岩手県立盛岡第一高等学校
1年 佐々木 詩月 さん

【審査員評】

少しアニメっぽい画像ですが、朝、寒い中を学校に行く状景の表現に、高校生らしい若さを感じて選びました。低いところに視点を決めた人物と、遠景の家とのバランスがダイナミックに上手くまとまっており、色彩感覚は良いと思います。

もう少し、自分でなければ描けない形を捜して描いていると、表現力が高まるでしょう。

 

*5位、6位、7位は同程度の作品でしたので、はからずも同じ高校から3名選ぶ結果になってしまいました。熱心に版画指導をされている先生がいられることと思われます。

Tenyテレビ新潟賞

広島市立安佐北高等学校
2年 新田 奈々 さん

【審査員評】

構図は大胆で、大きく描かれた魚船は画面をはみ出し、上の方の青いクジラのような天蓋に重心がありますが、背景の雲の形や山の色も負けずに面白いし、グレイの色が画面に多く入っているので、落ちついたバランスの良い作品になっています。

何を描きたかったかということが、あまりはっきり見えないのは惜しいところです。

UX新潟テレビ21賞

広島市立安佐北高等学校
1年 高澤 奈緒美 さん

【審査員評】

炎熱を吹き出すコンビナートと白熊の氷山が正面から描かれていて、地球温暖化の悲しみがテーマとして伝わって来ます。暖色と寒色のバランスをよく考えて構図されて居り、重ねられた色の調子も美しく、まとまっています。

ちょっと気になるのは、白熊の身体に実体感がないことで、雪だるまのようで溶けてしまいそうに見えるのは、意図されたことなのでしょうか?

サドテレビ賞

広島市立安佐北高等学校
2年 中山 千有希 さん

【審査員評】

原爆ドームや鶴が描かれているので平和を願うテーマと判りますが、掌に囲い込まれた画面上半の悲しみのドームの色や形と、下部分の、生命力に充ちた赤い大地と若葉との対比は、構成を良く考えて製作されたものと判ります。画面が重くなりそうな全体の濃色彩を、大きな掌の色の明るさが救っていますね。

出来れば同じテーマを、このようなシンボルを全く入れないで描く練習をして、気持ちを表現する能力を高めると良いでしょう。