第13回全国高等学校版画選手権大会
2013年
版画家(日本版画協会理事) 星野美智子
今年の本戦は春らしい好天に恵まれて、佐渡の魅力を豊かに感じながら制作を進められたことと思います。
出場シード校は、地域配分によらず純粋に作品によって選びましたので,完成した作品は、どれも、それぞれのテーマをしっかり表現しようとしており、構図・色彩・明暗構成など良く考えられていて、甲乙つけがたいた出来映えでした。
現場にきてテーマを与えられ、時間を限られて制作するのは大変だったと思いますが、共同作業の集中力によって大作を仕上げた体験は、版画の魅力とは何かということを知る機会であったと思います。
版画は,直接描く作品と違い、同じ下図でも、制作するプロセスで、彫り方,刷る順序、色の付け方等々により表情が全く変わりますので、下図よりも新たな展開を発見したり、より深く意図に近づいた作品を生み出すことも出来るのです。皆さんは母校に帰ってから、送られた版で出品作を必要枚数刷ることになると思いますが,それを終えた後、色を変えて刷ってみたりしても面白い発見があるでしょう。
現代版画は,複数のオリジナルを作る目的で制作されているのではなく、そのプロセスを経て、より客観的でクリエイティブな作品ができる魅力を追っているのです。
出場された高校生の中には将来絵画を目指す方も多いかと思いますが、画家に一番大切なことは、自分でなければ描けないものを表現出来る能力をつけることです。その時、どのような技法でどのように表現するかを考えることになるでしょう。皆さんの将来に、この大会が役立つことを願っております。
以上