第14回全国高等学校版画選手権大会

2014年


磯見 輝夫

 最終日、締め切りまでもう時間が無い、しかしまだ作業は続いている、一体間に合うのだろうか。緊迫した時間に見ている私達が、緊張してしまいます。制限時間になり全チームの作品が無事提出されると、やっとこちらも緊張がとけ安堵しました。

 佐渡に渡り、そこで出会うものの中から、テーマに沿った題材を見つけて版画を制作する。題材を決める過程ではチーム内での熱心な話し合いが行われたことでしょう。それぞれのチームが見つけ出した題材が、例年よりユニークな視点で捉えられた印象があります。一位になった伊東高校城ヶ崎分校の柿の木の畑などが良い例です。何を見つけて題材にしたかも、審査のひとつの要素になりました。

 予選の段階ではどうなるかと思いましたが、夜も寝ずに皆さんが取り組んだ結果は見事なものでした。大作にも関わらず、完成度の高い版画が揃い、一点も劣ったものが有りませんでした。順位を付けましたが、その差はわずかなものです、それは差というよりも違いと言った方が良いようなものです。

 多色版画の場合、制作の手順、版の組み立てなど計画性が必要ですが、なかなか計画通りには進みません。その過程では思わぬことも起こります。そうしたことを好転させ取り込んで制作に生かしていくことが必要になるでしょう。この大会が一チーム三人で構成されていることには意義があります。制作の中で意見を出し合うこと、自分とは違う意見を聞くこと、そうして出会った困難を乗り越えてゆく、それは貴重な経験だったと思います。

 大会は終わりましたが、皆さんがこれからも版画に対する興味を持ち続けてくれたら、私達版画に携わるものには大きな喜びです。しかし、たとえ版画から離れても自分の思いを何かの形で表現すること、それだけは失うことなく、大事に続けて欲しいと思います。

以上