第15回全国高等学校版画選手権大会

2015年


磯見 輝夫

 全国高等学校版画選手権も今回で十五回を迎えましたが、今年もまた熱戦が展開されました。佐渡の冬の風物詩となったはんが甲子園ですが、今回は冬だけでなく1年を通した佐渡の自然と暮らしに目を向けて欲しい、という期待を持ってテーマが出されました。

 今年の作品はテーマに添った完成度の高い作品が揃いました。特に上位数校は順位をつけるのに大変迷いました。文部科学大臣賞を受賞された東海大学付属翔洋高校の「春仕度」は、春に向けて冬仕度を取り除き、春を迎えるという主題を、陰刻と陽刻という木版画の技法的な対比に重ねて、冬から春へ移る姿を表現したことが見事でした。また二位になった青森県立弘前高校の「変わらぬ日々」は、特別なものではない見慣れた静物を題材に、柿の実の鮮やかな色彩と籠の目の細やかな美しさが調和する魅力的な画面を作り出し、秋を表現することに成功しました。三位の静岡県立伊東高校城ヶ崎分校の「春疾風」は版画としての完成度は一番だと思いました。春に吹く疾風を表現した構成力、色彩等、版画を制作するために必要な力を十分に持っているチームでした。また、福井県立丹南高校の作品は、画面の中心部と周囲のトーンを変える工夫をしています。周囲の装飾的な部分によって、主題となる朝の淡い空気感が十分に感じられる作品となりました。盈進学園東野高校の作品では、海に至る俯瞰した町並みの、朝の雰囲気が魅力的でした。その他審査員奨励賞の中にも岩手県立盛第一高校や神奈川県立弥栄高校など印象に残る作品がありました。また、今野百合子さんを始めとする個人賞を受賞した皆さんにもお祝いを申し上げます。

 例年通り最終日の熱気は見ている私達にも緊張感を与えます。版画とスポーツと全く別の分野ですが、その中で共通するものを見たような気がしました。選手諸君が全力で版画に取り組む姿に感動しましたが、この大会に出場した皆さんもまた、この経験から多くのものを学んだと思います。

以上