第16回全国高等学校版画選手権大会

2016年


磯見 輝夫

昨年「はんが甲子園」は第15回の節目を迎えましたが、今年は新たな出発となる第16回目の大会が開催されました。そして今年の大会も最後まで熱心に制作に向かった選手諸君のおかげで、熱のある充実した大会となりました。

今年は佐渡特有の山と海との間に暮らす人々、そこに生まれた文化を知ることで、佐渡を表現して欲しいというテーマが出されました。このテーマからは出来るだけ佐渡を知る事が要求されます。それぞれのチームがそれぞれの仕方で取材をしました。そしてその取材の様子を制作が終わった後の交流会で各チームに話して貰いましたが、その話でどのチームも真剣に取材した事が伝わりました。取材の中でお会いして話を聞かせて頂いた人、実際に体験をさせて下さった人、多くの人に出会い交流が出来たことに感動しました。版画を制作することは、版を彫ったり、刷ったりすることばかりが大切なのではありません。何がその版画を制作する動機になるかが大切です。

今年の作品は思いがけなく、たらい舟を描いた作品が多かったのが特徴でした。理由は分かりませんが、外では見る事の出来ないものとして、佐渡独特のものを感じたのでしょうか。

そうした中で文部科学大臣賞に輝いた信愛女学院の選んだものは、酒造りのもろみの樽でした。三つの円を並べた大胆な構図が力強さを感じさせます。また上部の木材やもろみの入ったドラムの質感など、構図の面白さだけではなく、細部にも神経を使い制作されたことが分かります。

たらい舟を題材に選んだ静岡翔洋高校、福井の藤島高校、伊東高校城ヶ崎分校は、それぞれの表現方法でたらい舟を描き、佐渡を表現しました。翔洋高校の作品は、版を重ねることで、水やたらいの質を描き、隙のない充実した版画にしました。藤島高校はそのたらい舟を描くだけではなく、それを漕ぎ出す事に、未来を重ねました。城ヶ崎分校の作品は美しい色彩を重ねて、山や海を表現し、魅力的は作品としました。また弘前実業高校が選んだ題材は、かって金山から出た金を運び出した港でした。モチーフとしてもユニークですが、風景画として見てもしっかりとした作品で、版画を良く理解しているチームだと思いました。

個人賞にも多くの参加がありましたが、その中で、新潟日報賞の楠本璃子さんの作品はその表現力に感心し、印象深く残りました。

今大会に参加した全高校に言えることですが、全体にレベルが上がり、この中で突出した作品を創ることは年々難しくなってきたように思います。それだけにこれからの「はんが甲子園」が楽しみです。個人賞を含めて沢山の高校が参加してくれる事を願っています。

以上