第17回全国高等学校版画選手権大会

個人部門入賞作品 2017年

新潟日報社賞

01_新潟日報社賞_広島市立沼田高等学校_橋本鈴広島市立沼田高等学校
橋本 鈴

 ドライポイントでしょうか、大きな画面に的確な描写力で鶏をモチーフに描いていますが、そこに加えられた植物等のイメージが違和感なく鶏の一部をなしている構成力に感心しました。堂々と最後まで描ききった完成度の高い作品だと思います。鶏の頭上にある肋骨のような骨が、なぜ頭上にかぶっているのか話を聞いてみたいと思いました。

NHK新潟放送局賞

02_NHK新潟放送局賞_広島市立沼田高等学校_大野芽依

広島市立沼田高等学校
大野 芽依

 工場のような建物群が沢山の煙突から煙を出している。重いブルーの色彩で刷られた画面から、暗く不気味な世界が強く伝わってきます。作者が感じる文明社会への不安が描写の力量と相まって、迫力を持って伝わる作品です。版画はこれまでにも多くの社会的な主題を表現してきましたが、この作品からも作者の強い思いを感じます。

BSN新潟放送賞

03_BSN新潟放送賞_岩手県立盛岡第一高等学校_遠藤仁美

岩手県立盛岡第一高等学校
遠藤 仁美

 自分の好きな物、日常使っているもの、また憧れるもの等、自分の身の回りにあるものを的確に再構成して創られた私の世界でしょう。少ない色彩で刷られていますが、その淡い色彩の変化が、穏やかで美しい版画の風景を作り出しています。劇的なものはありませんが、自然に受け取ることができる、大変魅力的な作品になりました。

NST賞

04_NST賞_静岡県立伊東高等学校城ヶ崎分校_大川紗英

静岡県立伊東高等学校城ヶ崎分校
大川 紗英

 木版の作品ですが、この作品の特徴は大胆な色版の組み合わせで多色版画を構成しているところです。見開いた本かノートを作品のモチーフとした発想にまず感心しました。それを説明的に版にするのではなく、色版に分解して色面の重ね合わせで表現しています。多色版画について良く分かっていなければ出来ない作品です。

TeNYテレビ新潟賞

05_TeNYテレビ新潟賞_東海大学付属静岡翔洋高等学校_久保田かおり

東海大学付属静岡翔洋高等学校
久保田 かおり

 比較的大きな力のこもった力作です。全体に少し硬い感じもありますが作品の主題に向かってしっかりと描いています。「繊細」という題名からは、傷つきやすい、また傷つけやすい若い人の心理や状況を描いていることが分かります。高校生の版画の主題がこうした人間の内面に向かうことに強い印象を受けました。

UX新潟テレビ21賞

06_UX新潟テレビ21賞_埼玉県立熊谷西高等学校_鵜飼美緒

埼玉県立熊谷西高等学校
鵜飼 美緒

 多色木版による海の情景ですが、清々しい色彩の美しい作品です。多色版画は版をどのように色分けするかが重要ですが、その版の組み合わせも的確です。型にはまらない自由でのびのびとした色版によって、海の広々した空間と澄んだ空気を感じさせる好ましい佳作だと思いました。

サドテレビ賞

07_サドテレビ賞_早稲田大学系属早稲田実業学校西尾-実華

早稲田大学系属早稲田実業学校
西尾 実華

 「海への旅」と題されたこの作品は小さい作品ですが、手抜きせず丁寧に版を作り丁寧に刷られた、木版の良さを十分に感じさせる作品です。こつこつと版を彫る、その作業する手は版画にとってとても大切な要素です。版画を見る人はその作品のなかに、その作者の手を感じ、作者自身を感じて作品を見るのです。

ベストライフ賞

08_ベストライフ賞_島根県立大田高等学校_安道紫音

島根県立大田高等学校
安道 紫音

 ドライポイントによる小品ですが、壊れかけたビルが海に沈んでいます。題名もそのまま「海に沈む」です。深刻な状況なのに画面からはほのぼのとした明るさを感じます。このギャップは何なのか作者に訊ねたいところです。海の中に点在するほんのりと明るい光など、作品の持つ温かさは作者の人柄から生まれるのでしょうか。