第18回全国高等学校版画選手権大会

個人部門入賞作品 2018年

新潟日報社賞

01_新潟日報社賞_静岡県立伊東高等学校城ケ崎分校_野崎郁美静岡県立伊東高等学校城ケ崎分校
野崎 郁美

何気ない日常、束の間の休息、ふと垣間見える人間の哀歓が静かに伝わって来るようです。無駄のない人物表現に見る完成度の高い墨版と的確な色版の組み立て、特に人物を生かす色面による陰影と遠景のさり気ない配色がこの作品に一層の奥行き(深み)を与えています。

NHK新潟放送局賞

02_NHK新潟放送局賞_広島市立沼田高等学校_小坂優呂広島市立沼田高等学校
小坂 優呂

遠景のビル群と画面中央を占める頭骨に込められた作者のメッセージ、この叫びのような思いが荒削りな彫版の勢いと大胆な色面の強さに支えられて迫って来ます。
このフラットな色面は木版画ならではのものです。作者の熱い思いに版が力を与えてくれたとも言えましょう。

BSN新潟放送賞

03_BSN新潟放送賞_青森県立弘前実業高等学校_古屋清菜

青森県立弘前実業高等学校
古屋 清菜

なんの衒いもなく素直に描いた幼子の姿。(作者の)弟でしょうかそれとも甥っ子?そんな想像をしてみたくなる程に眼差しの優しさが伝わる作品です。何気なく描かれている様に見えて緻密に計算された色面の構成、的確な版分けと微妙な階調にまで気配りされた色使いがこの作品に生命を与えています。

NST賞

04_NST賞_埼玉県立熊谷西高等学校_石塚卓巳埼玉県立熊谷西高等学校
石塚 卓巳

仰ぎ見た城壁。城を描く時様々な角度、視点がある中で敢えて石垣を中心に据えたこの構図に取り組んだ感性と思い切りの良さを評価しました。
陰影の扱い、色の組み合わせによって色面のコントラストを強調するなどの工夫があればより生き生きとした画面になると思います。

TeNYテレビ新潟賞

05_TeNYテレビ新潟賞_静岡県立伊東高等学校城ケ崎分校_杉山惟咲静岡県立伊東高等学校城ケ崎分校
杉山 惟咲

抑制の効いた人物表現によって多感な時期の少年(少女?)の心の奥底に蠢く不安、焦燥といった心象が伝わって来る作品になっています。
鹿の頭骨を持った人物のフオルムに対する彩色が背景の黒を(単なる黒に終らせることなく)ある種の空気感すら漂わせる存在にまで高めています。

UX新潟テレビ21賞

06_UX新潟テレビ21賞_埼玉県立熊谷女子高等学校_林優衣埼玉県立熊谷女子高等学校
林 優衣

実に大胆な構図です。水辺の草むら、餌を求めて動き回る中の一瞬を捉えて生き生きとした画面を描出し得ているのもこの構図ゆえと言えるでしょう。
色版の作りには隅々まで神経が行き届いているのですが…。残念なのは” 摺り” です。摺り次第でこの作品は一層の輝きを放つ存在になるでしょう。

サドテレビ賞

07_サドテレビ賞_京都精華学園高等学校_中村元晴京都精華学園高等学校
中村 元晴

写真からの引用と思われますが、「ノミ(彫刻刀)で絵を描いた」からこそ成立した作品です。版と対峙してひたすら彫り進む時、技量以上の力が宿ることがあります。その力によって単なる写真が「絵画」に生まれ変わったのです。路地裏に佇む男たち…ある種の臨場感を感じる作品になっています。

ベストライフ賞

08_ベストライフ賞_神奈川県立多摩高等学校_阿部朱理神奈川県立多摩高等学校
阿部 朱里

コラグラフと凹版による作品です。この技法は刷りが成否のカギとなります。版面に載せた油性インクを拭き取ることで(凹部に残ったインクによって)生まれた線と面の微妙な階調を生かしてミクロの世界の描出に成功しています。版画には多くの技法があり表現も様々ですが、その一端を示す作品です。

昭和ゴム機工賞

09_昭和ゴム機工賞_埼玉県立熊谷西高等学校_笹川陸斗埼玉県立熊谷西高等学校
笹川 陸斗

山あいのごく普通の風景……。しかし、主版による輪郭線に頼らず色面で構築した画面が新鮮です。技術的には彫りも摺りも今一歩ですが、畏縮することなくのびのびと制作している姿が透けて見える様で好感します。摺りによってはより明快で爽やかな作品になるでしょう。「バレンは筆」なのです。