第19回全国高等学校版画選手権大会

2019年


 小林敬生

この大会の特色は3人1組で制作する事、取材から先品完成まで僅か3日間という2点にあります。過酷とも言える試練に3人のチームワークで挑む選手たち、今年も1チームの落伍もなく乗り超えた事を祝したいと思います。

第1回から全266チーム、1チームの棄権もなく乗り超えたということは奇跡に近いものとすら思います。

今回の課題は“佐渡からの眺め”としました。

佐渡に来てあらためて眺める“ふる里” や”今の日本“を意識した上で佐渡を描いて欲しいとの思いから決めたものです。

完成した14作品、それぞれが佐渡に取材し日本の原風景、現在の日本のありようを意識した”それぞれの意図“が読み取れて心地よく審査に入る事が出来ました。

中川理事長と2人、賞の選考に当たりましたがそれぞれに魅力があり甲乙がないなかで各賞を選び出さなくてはなりません。

その中で私達は、文部科学大臣賞に「手塩にかける」を、中小企業庁長官賞に「かの山」を選びました。共に「今の日本に対するメッセージ」を含む作品でまさに甲乙はありません。

「手塩にかける」は佐渡に古来から伝わる製塩法を継承する現場に取材したもので、手間ヒマかけて塩をつくりあげる様子を通して人間本来の営みの大切さを訴えかけているように思います。木版画ならではの作品の完成度も高く、ことに画面上部の扱いに感嘆しました。湯気を描く事なく湯気につつまれて働く人物を見事に表現し得ていたからです。

「かの山」は佐渡に取材しながらも日本の農村の何処にでも見られる風景をさりげなく描いています。大切にしたい日本の原風景をモノクロームで描き出していますが、トーンの階調が美しく完成度の高い作品となっています。殊に油性インクでの煙り表現が心憎い効果をあげています。

新潟県知事賞「またお会いしたいです」佐渡市長賞「トキの想い」佐渡版画村賞「ただいま」はそれぞれ”大切にしたいもの“への思いが込められた作品で木版画ならではの描写に好感しました。

そのほかの作品も高校生らしい感性が透けて見えそれぞれが魅力的だと明言します。

以上