第10回全国高等学校版画選手権大会

個人部門入賞作品 2010年

新潟日報社賞
K-1s

千葉黎明高等学校
3年 笠井 雄太 さん

【審査員評】

白と黒のバランスがとてもよくできています。花びらが幾つにも重なって、自然の中にあるものが無限大だということを作者は表したいと思っているのでしょう。花びらが6つあれば6つでおわりでは無く、いろいろな物がどんどん溜まっていく。自然にはそういうものが無限にあることをこんな小さな作品の中で表しているような気がします。

構成としては単純ですが、単純であるがゆえに力強さが伝わってきます。木版の王道を行っており、好感が持てます。

NHK新潟放送局賞

静岡県立伊東高等学校城ヶ崎分校 2年 飯田 健太郎 さん

静岡県立伊東高等学校城ヶ崎分校
2年 飯田 健太郎 さん

【審査員評】

自然界の緑がとてもうまく抽象的に構成されているのではないかと思います。色の構成が全体にうまく行っていて、ちょっとした緑の深さとか、木の枝や幹のようなものがうまく配置されています。

何気なく合わさっているグリーンでも、計算されているようです。版数も多く奥行きもあります。

BSN新潟放送賞

福井県立藤島高等学校 2年 浜岸 夏苗 さん

福井県立藤島高等学校
2年 浜岸 夏苗 さん

【審査員評】

ドライポイントは線の強弱がうまく出しにくいのですが、この作品の中では非常にその調子がうまく、ドライポイントの感じが出ています。何よりもこの作品のテーマは大きな魔。大きな手がわれわれ人間を押さえつけているような感覚が表現されています。強いメッセージを感じる作品です。

陰と陽。陰を使って非常に効果的に作品を作っています。自然の中に陰と陽があるように、人間の世界の中にも陰と陽があって、それをドライポイントで効果的に出しています。

NST新潟総合テレビ賞

K-4s

島根県立出雲商業高等学校
2年 岡 美由紀 さん

【審査員評】

島根県は銅鐸や銅剣がよく出土するが、作者の持っていた古代の銅剣に対する強い存在感を表しているようです。無数にあるように書いていますが、上に立っているだけでは無く、少し倒したりして絵の中に一つの変化を持たせようとしています。一つの版で物を表現するのではなく、現代風ともいえる、押すという行為のなかで、作者が持っている銅剣と出雲の発掘のイメージを感じて表しています。

一見無造作に並べられている銅剣ですが、そこに斜めになったり、少しくっつけていたりすることが、非常に空間として面白い構成になっています。

Tenyテレビ新潟賞

神奈川県立弥栄高等学校 2年 倉橋 舞 さん

神奈川県立弥栄高等学校
2年 倉橋 舞 さん

【審査員評】

銅版と書いているが、銅版の中でもエッチングとアクアチントという銅版の技法で、腐食するタイプです。腐食のしかたはなかなかよくできています。アジの開きかなにか魚の開きでしょう。高橋由一みたいに、鮭の切った油絵みたいな感じで不思議なものを持っている絵の表現をしています。物足りないのは、魚の中の色の変化とか肉の幅の感じがもう少しアクアチントの技術があればできるのではないでしょうか。

小さい作品ですが、存在感をはっきり出した作品です。どこにでもあるアジの開きを作品にするというのは単純な作業のようせすが、できたものを見るとその物質感をよく表現しています。

UX新潟テレビ21賞

千葉黎明高等学校 2年 齋藤 千鶴 さん

千葉黎明高等学校
2年 齋藤 千鶴 さん

【審査員評】

銅版画のドライポイントという技法です。具体的な風景、古い家をスケッチしてそれを銅版にしたと思います。ドライポイントはどうしても単調になったり、濃くなる部分が出てしまいますが、この作品は黒が強すぎるようです。ただ表現してあるガラスの感じとか窓の感じとか、建物の変化が、非常にうまくスケッチされていて、その表現力がとてもいい。

高校生らしく、現実にあるものをそのまま写し取る感じで書いてありますが、ドライポイントの特色をうまく生かしています。

審査員特別賞

福井県立藤島高等学校 2年 橋本 歩美 さん

福井県立藤島高等学校
2年 橋本 歩美 さん

【審査員評】

この作品はドライポイントでできていますが、抽象的、現代風の心象風景のなかに白黒の色ばかりではなく水彩の絵の具を使いながら、それぞれ色が着彩してあります。その色がとてもシックで、うまく入っています。全体のバランスもよく表現されています。

画面を見ますと釘でドアを止めてあります。これは作者の中になにか意図したものがあり、非常に強いものを感じます。技法は、木版と違って薄く色をつけることによって、細い線をきちんと残しています。作者の気持ちがよく表れています。