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第16回全国高等学校版画選手権大会
予選総評 2016年
今年もはんが甲子園の予選が終わりました。今年の応募校は昨年より少しすくなかったようですが、高校生の版画作品をこれだけまとまって見る機会はなかなかありません。それだけに審査を担当する者にとっても大変楽しみな機会となります。
今年の第一印象は版種の巾がひろがったと感じたことです。木版だけでなく他の版種、リトグラフやドライポイント、また版の上にメデュームを塗ってインクと共に剥がす、剥がし刷りのような特殊なものも見られました。今までも木版以外の版種は有りましたが、あまり目立たない印象がありました。しかし今回の出品作品ではドライポイントやリトグラフの作品の印象が強くなったと感じました。
今回の選考について昨年と違うところは、ブロック別に代表を選ぶことになったことです。北海道・東北ブロック、関東ブロック、北信越・東海ブロック、近畿・中国・四国・九州ブロックに地元佐渡の5ブロックから各ブロック複数校を選ぶことになります。
この代表チームの選考はなかなか悩ましいものがあります。高校生が制作した版画作品をこれだけ目の前にしますことは、我々版画に携わる者にとっては大きな喜びであります。しかしその中から代表チームを選ぶということは、選ばれなかったチームに対して胸に痛みを感じます。
今回の出品作品は飛び抜けて印象的な作品が無く、全体に一定のレベルを持った作品が揃いました。先に書きましたように、木版以外の作品もこれまでより完成度が高くなったようです。希望を言えばもう少し個性の際立った作品が欲しかった、というのが正直な感想です。全体が平均化したことで、選考はますます難しくなりました。一点一点の作品評価もありますが、チームを組んだ3人の個性がどんなものを創りだすのか、そうした興味を抱かせるチームに点が入ったようです。またブロック制なので、ひとつのブロックに優秀校が集中してしまうと、レベルの高いチームも選ばれなかった残念な結果もありました。
また、個人賞は作品に取り組んだ意欲と、版を通すことで表現された、版画であることが生かされた作品が選ばれました。しかしここでも拮抗する作品が多く、選考には迷いました。この選に洩れた作品のなかにも魅力的な作品が少なからず有ったと言う事を記しておきます。
審査委員長 磯見 輝夫
第16回全国高等学校版画選手権大会
本戦選抜校の作品 2016年
カッコ内は選抜回数
青森県立弘前実業高等学校(7) | ||
3年 石井 ことみ | 3年 大里 このみ | 3年 吹田 美鈴 |
岩手県立盛岡第一高等学校(6) | ||
2年 菊池 十喜子 | 2年 清川 陽子 | 2年 佐藤 萌 |
岩手県立平舘高等学校(初) | ||
2年 佐々木 駿 | 1年 髙橋 黎 | 1年 遠藤 大輔 |
埼玉県立熊谷女子高等学校(4) | ||
2年 関口 安津美 | 2年 木戸口 未歩 | 1年 杉田 悠歌 |
盈進学園 東野高等学校(4) | ||
2年 石井 翔太 | 2年 川鍋 龍貴 | 1年 大貫 由加里 |
埼玉県立熊谷西高等学校(3) | ||
1年 内沼 里織 | 1年 佐藤 弘樹 | 1年 萩原 優里 |
新潟県立佐渡高等学校(3) | ||
2年 鰕名 翔太 | 2年 葛原 幸乃 | 2年 大滝 麻莉 |
新潟県立佐渡中等教育学校(4) | ||
2年 菊池 啓吾 | 2年 後藤 まこと | 2年 祝 百花 |
福井県立藤島高等学校(4) | ||
1年 髙島 由衣 | 1年 巣守 美羽 | 1年 森阪 佳奈 |
福井県立丹南高等学校(2) | ||
2年 野木 彩乃 | 2年 松田 菜美恵 | 2年 藤木 美帆 |
静岡県立伊東高等学校城ケ崎分校(10) | ||
2年 小野 あいり | 2年 今 詩織 | 2年 池谷 安梨菜 |
東海大学付属静岡翔洋高等学校(10) | ||
2年 久保田 かおり | 1年 鈴木 維円 | 1年 古松 萌加 |
大阪信愛女学院高等学校(12) | ||
2年 喜多 修子 | 2年 土内 彩帆 | 2年 星野 沙季 |
広島市立沼田高等学校(2) | ||
1年 橋本 鈴 | 1年 橋本 蓮 | 1年 新田 智之 |
第16回全国高等学校版画選手権大会
個人部門入賞作品 2016年
新潟日報社賞 |
版画というものを良く理解している秀作です。木版の彫り跡が重なることで生まれる、水の透明感や質感が色彩の美しさと共に見事に表現されていると思います。そして水の中で拡散する人物のフォルムも的確です。画面の下方を大きく空け、上の方に焦点を集中させたことで浮遊感が強く感じられます。大変魅力的な作品です。 |
NHK新潟放送局賞 |
黒の版を下地として刷って、その上から不透明な色版を刷るという、陰刻法の作品と言えるのでしょうが、陰刻ということを感じさせない作品です。それは、床の上にしっかりと立っている足あるいは靴というこの作品の主題を十分に理解しているからです。小さな説明を避けて、大きくしっかりと構成したことで成功しました。 |
BSN新潟放送賞 |
丹念に細かく彫りあげた木版画の効果が魅力的な作品です。特に特徴のある風景では有りませんが、作者が板を彫ることに注いだ熱意と根気が、この風景を非凡なものにしています。こうして版を媒体とすることで、付け加わるものがあると言うことが版画の持つ力です。 |
NST賞 |
リトグラフの作品ですが、リトグラフは手で描くことに最も近い版画と言えます。それだけに描写力が必要になります。また描かれるものの設定が重要です。この作品に描かれた世界には不思議な謎めいた雰囲気があります。一つひとつ描かれたものに寓意があるのかも知れませんが、上から下がった鎖が暗示的です。また斜めから見た壁の設定がユニークだと思います。 |
TeNYテレビ新潟賞 |
出品された版画のなかで、一番明るく、軽やかなセンスを感じさせる作品で目を惹きました。柔らかく温かなフォルムで構成された画面からは、ひとつの物語が生まれてくるようです。全体の構成も硬さがなく、ゆったりとしていて、また、良く考えられていて魅力的です。 |
UX新潟テレビ21賞 |
木版らしい力強い彫刻刀の跡が、ケレン味なく表れていて好感の持てる作品です。彫ることで人物を描くのはなかなか難しいことですが、この作品ではエプロンの模様や着ている服のしわなどを取り入れながら、単調にならずに描かれています。何より白と黒とのコントラストに清潔な感じをうけます。 |
サドテレビ賞 |
ドライポイントによる作品ですが、工業的なものとトマトや白菜、魚(蛇?)など有機的なものが対比して描かれた風景です。この風景のなかに作者のメッセージが込められているのでしょう。ひとつひとつのものがしっかりと描かれています。また黒ではなくブルーで刷られていることで、そのファンタジーが印象的に見えます。ドライポイントの特徴を生かした作品です。 |
サンフロンティア不動産賞 |
立ち上がった建物の間を遠くに続く道と、その先にある空が描かれていますが、その空の赤い夕焼けが暗示的です。赤く燃え上がる火にも見えます。また、道の中央にいる猫がこの画面の暗示的な不安を強調しています。ドライポイントの線の集積によって描かれる道や建物と、鮮やかで流動的な空の対比が強い印象を与えます。 |
ベストライフ賞 |
陰刻法で描かれた港の風景です。水の部分を画面いっぱいにとって、そこに映る建物を描きます。手前を暗く遠方を明るく構成したことで、水面の広がりを感じさせます。また、画面の右手前の堤の一部を描き、黄色と黒の強い対比を置いたことが成功していると思います。 |
第16回全国高等学校版画選手権大会
予選結果/個人賞発表 2016年
第16回大会初戦審査会を平成28年1月13日(水)に開催しました。
結果は以下のとおりです。団体部門 選抜校は3月17日から新潟県佐渡市で開催する本戦大会への出場資格を得ました。
団体部門:本戦出場校
学校名 | 都道府県 | 出場回数 |
青森県立弘前実業高等学校 | 青森県 | 7 |
岩手県立盛岡第一高等学校 | 岩手県 | 6 |
岩手県立平舘高等学校 | 岩手県 | 初 |
埼玉県立熊谷女子高等学校 | 埼玉県 | 4 |
盈進学園 東野高等学校 | 埼玉県 | 4 |
埼玉県立熊谷西高等学校 | 埼玉県 | 3 |
新潟県立佐渡高等学校 | 新潟県 | 3 |
新潟県立佐渡中等教育学校 | 新潟県 | 4 |
福井県立藤島高等学校 | 福井県 | 4 |
福井県立丹南高等学校 | 福井県 | 2 |
静岡県立伊東高等学校城ケ崎分校 | 静岡県 | 10 |
東海大学付属静岡翔洋高等学校 | 静岡県 | 10 |
大阪信愛女学院高等学校 | 大阪府 | 12 |
広島市立沼田高等学校 | 広島県 | 2 |
賞名 | 学校名 | 氏名 | 学年 |
新潟日報社賞 | 静岡県立伊東高等学校
城ケ崎分校 |
楠元 璃子 | 3年 |
NHK新潟放送局賞 |
静岡県立伊東高等学 校城ケ崎分校 |
山崎 紗永 | 1年 |
BSN新潟放送賞 | 北海道札幌平岸高等学校 | 髙橋 菜々子 | 1年 |
NST賞 | 福井県立藤島高等学校 | 白崎 千晴 | 1年 |
TeNYテレビ新潟賞 | 埼玉県立熊谷西高等学校 | 工藤 由依菜 | 1年 |
UX新潟テレビ21賞 | 大阪信愛女学院高等学校 | 佐藤 望結 | 2年 |
サドテレビ賞 | 岩手県立盛岡第一高等学校 | 髙橋 奈々 | 2年 |
サンフロンティア不動産賞 | 岩手県立盛岡第一高等学校 | 須川 麻柚子 | 2年 |
ベストライフ賞 | 新潟県立佐渡中等教育学校 | 本間 茜 | 1年 |
審査の様子