第8回全国高等学校版画選手権大会
本戦結果 2008年
審査総評
全国高等学校版画選手権大会も8回を迎えた。前回、ややもすれば概念的な作品が散見されたのを機会に、もっと現場での生身で触れた感動をそのまま作品にしてもらえるようにとの配慮を込めて、今回は主催者側から“美しい佐渡と人間”というテーマが提示されての本戦となった。
取材当日は全島よく晴れて暖かく清々しい光が満ちあふれていて、取材途上で期せずに出会った朝の風景―朝採りの収穫をエプロンで運ぶ土地の婦人の「ホラ見てご覧なさい、こんなに」とでも会話したであろう、なにげないシーンが描かれた作品がある。また残雪の金北山を背景に満面に笑みを浮かべた老婦が、素直にしかも堂々と作品化されたものもある。いずれも瑞々しい感性で捉えられたまさに現場からの感動が結実したような作品で、これまでになかったものである。スナップ的ではあるがこうした気負わない作品は、固さの目立ったはんが甲子園に良い意味での風穴を空けるものとなるだろうと思われた。なお、今回の受賞校の大半がこれまでは賞からはずれていた学校であることを考え合わせると、はんが甲子園に新しい局面が拓けてきたようで、これもうれしいことであった。
実質三日間の、取材から摺り上がりに至る制作に費やされた時間は、参加した生徒さんはもちろん監督の先生も含めて、この佐渡でかけがえのない経験をされたことと思う。取材から構想、彫り、摺りと、チームとしての共同作業は、参加されたすべての学校に等しく貴重な経験をもたらしたものと思われる。これらがなにものにも代え難い宝物として、これからの生活に意味をなすことを願って止まない。
最後に、大会を支えてこられた相川町商工会の方々、また共催や後援をして下さった多くの方達の善意とご苦労に心から敬意を表して、総評としたい。